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外からの報酬は「内発的な価値」を損なうだけではない〜 金銭的報酬と社会的報酬が、やる気の脳内メカニズムに異なる影響を与えることを発見

2026.05.29

このたび、個体間脳ダイナミクス連携ユニットのメンバーが著者として参加した論文“Beyond the undermining effect: Extrinsic rewards preserve neural intrinsic reward”が、学術誌 Behavioral Brain Research に掲載されました。
https://doi.org/10.1016/j.bbr.2025.115996

「金銭的な報酬を与えると、かえって自発的なやる気が下がる」という現象は、心理学では「アンダーマイニング効果」として知られています。しかし、報酬には金銭的なものだけでなく、ほめ言葉のような社会的な報酬もあり、それぞれが内発的動機づけにどのように影響するのかは十分に分かっていませんでした。
本研究では、54名の参加者を対象にした実験により、動機づけの効果を解明することを目指しました。参加者はストップウォッチゲームを行い、その際の脳活動をfMRIで測定するとともに、課題の合間に自発的にゲームへ取り組む行動を調べました。ゲームの成功に対して与える報酬として,金銭的報酬、社会的報酬、報酬なしの3条件を準備し,行動と脳活動の条件差を比較しました。
その結果、最初に与えられていた報酬が取り除かれた後の脳活動を見ると,金銭的報酬と社会的報酬のどちらを受けた参加者でも、脳内の報酬系の活動として評価した「内発的な価値」は保たれることが示されました。一方で、自発的にゲームへ取り組む行動として表れる「自発的に取り組む意欲」は、金銭的報酬条件後では低下し、社会的報酬後では維持されました。この結果は、内発的動機づけを「楽しい・価値があると感じること」と「実際にやろうとする意欲」に分けて考える重要性を示しています。また、「アンダーマイニング効果」は報酬がやる気を下げるという単純な効果ではなく,報酬の種類によって、脳内の価値づけと行動としてのやる気に異なる影響が生じる,複雑なメカニズムである可能性が明らかになりました。
この成果は,教育、職場、研究、スポーツなど、報酬やフィードバックを通じて人のやる気を支える場面において、金銭的報酬と社会的報酬をどのように使い分けるべきかを考えるうえで重要な知見であると考えています。