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計算論的集団力学連携ユニット板尾研究員らの国際共同研究チームによる論文"Formation of human kinship structures depending on population size and cultural mutation rate"がPNAS誌に掲載されました
2024.08.08
計算論的集団力学連携ユニット板尾健司基礎科学特別研究員らの国際共同研究チームは、伝統的な小規模社会に一般的に見られる親族構造が生まれるメカニズムに関する論文を発表しました。
https://doi.org/10.1073/pnas.2405653121
Abstract
社会構造の複雑さは、人口規模や文化の伝達の仕方にどのように依存するのでしょうか?伝統的な小規模社会における親族構造はそのような複雑さの典型例の一つです。そこでは、人々がいくつかの氏族に分類されていて、所属する氏族に応じて、どの氏族の相手と結婚しなくてはならないかが規則によって定められています。本研究では、人々が文化的同胞と義理の親族と協力し、配偶上のライバルとは競争するという、結婚に関する相互作用を数理的に表現したシンプルなモデルを構築しました。このモデルでは人々は文化的な形質と選好という量を持っています。男性の形質と女性の選好が近いときに結婚が起きるとし、またこれらの値に応じて人々の協力と競争の関係および、家族の人口成長率が決まるとしました。進化シミュレーションの結果、人々の形質と選好は多様化し、自発的にいくつかの集団が形成されました。人々は集団内の相手を同胞とみなす一方で、自集団とは異なる特定の集団の相手を配偶者として選好しました。つまり、人々がいくつかの氏族に分類されていて、所属する氏族に応じて、どの氏族の相手と結婚しなくてはならないかが決まる親族構造が進化したのです。氏族同士は選好関係によってつながっていて、その関係は全体としてサイクルを形成します。進化した構造はサイクルの周期の長さと数によって特徴付けられました。進化する構造のパラメータ依存性を調べると、まず協力を得ることが競争を避けることよりも重要な場合には周期2の構造が生まれ、逆の場合には長周期のサイクルを複数含むような構造が生まれやすいことがわかりました。さらに、形質と選好の突然変異率と、社会の人口規模という二つのパラメータに対する依存性を調べると、これらの値に応じて、複雑な構造が生まれる確率と、それが崩壊する確率が決まっていることがわかりました。これにより、個人レベルのミクロな相互作用から社会レベルのマクロな親族構造が生まれる仕組みと、進化する構造の環境要因依存性が明らかになりました。本研究のアプローチは、文化人類学における観察事実や経験的な理論に基づいて、人類史に典型的な社会構造が生まれる仕組みを理論的に調べることを可能にしています。このような学際的な方法により、人間社会に普遍的な特徴が明らかになるでしょう。Figure
理研のHPにプレスリリースが掲載されております。
そちらも是非ご覧ください!
https://www.riken.jp/press/2024/20240806_1/index.html