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計算論的集団力学連携ユニット板尾研究員らの国際共同研究チームによる論文"Self-organized institutions in evolutionary dynamical-systems games"がPNAS誌に掲載されました

2025.04.15

計算論的集団力学連携ユニット板尾研究員らによる論文"Self-organized institutions in evolutionary dynamical-systems games"がPNAS誌に掲載されました。
https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2500960122

この研究では、ゲームにおいてプレイヤーが「どのように行動するか?」ではなく、「どのように考えて行動するか?」をモデル化することで、ゲームの中でプレイヤーたちがルールを作っていく過程をシミュレーションしました。人間が集団生活の中で自らルールを定めるという社会的なプロセスを説明するために、物事の変動を数式で捉える力学系の数理を用いるところがポイントです。今後も、社会科学の知見と物理学の方法を組み合わせた学際的なアプローチによって、制度が生まれるメカニズムを説明する研究に取り組んでいきます。

Abstract

共有資源を持続可能に利用するためには、各人が適切な範囲内で資源を利用する「協力」が重要です。そのためには、「どの行動が協力で、どの行動が裏切りに当たるのか」を定義し、人々が協力を選択しやすくなるような規範や、違反者への罰則が必要になります。こうした規範や罰のことを制度と呼びます。実際、世界各地の社会では、人々が自発的に制度を生み出し、持続可能な資源管理に成功している事例が数多く報告されていますが、一方で制度が確立できず資源が枯渇してしまう例も存在します。このような制度はいかにして生まれるのでしょうか? 本研究では、制度が生まれるメカニズムを説明するために、従来のゲーム理論を「力学系」の考え方によって拡張した、進化力学系ゲーム理論を構築しました。重要なのは、プレイヤーの行動によって資源が変動することと、各プレイヤーが「環境や相手の状態に応じて行動を決める意思決定関数」を戦略とすることです。従来のゲーム理論では戦略や利得が固定されがちでしたが、本研究のアプローチではそれらを関数として表現して時間的な変動を考えることで、制度の進化を実演することを可能にしています。 シミュレーションの中で意思決定関数が進化すると、人々は相手の振る舞いに応じて自分の振る舞いを変えるようになりました。それはあたかも人々が自発的に協力と裏切りを区別する基準をつくり、協力には協力を、裏切りには懲罰を返すような振る舞いでした。このことから、何が協力かを定める規範と、違反者への罰を与える制度の進化が確認され、それが生まれる仕組みが明らかになりました。

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https://www.riken.jp/press/2025/20250415_2/index.html